身長・体重・BMI
身長と体重を測定し、その値からBMI(Body Mass Index) を算定します。BMIの算定式は、体重(kg)÷身長(m)の2乗で、これは肥満度を表す指標として、世界的に用いられている体格指数です。
日本肥満学会の基準では、18.5未満が痩せ、18.5以上25未満が普通体重、25以上が肥満と分類されます。標準体重はBMIが22となる体重のことで、健康維持のために最もよい体重とされています。
体脂肪率
体重に占める脂肪の割合(体内の脂肪重量を体重で割ったもの)を、体脂肪率(%)と言います。体重計に乗った時に、体内に微弱な電流を流して、体脂肪率を推定する「生体インピーダンス法」という方法で測定します。健康的とされる体脂肪率は、男性10%以上20%未満、女性20%以上30%未満と言われています。
腹囲
腹囲とは、お臍の周りのウエスト長のことです。腹囲は内臓脂肪を推測する指標として、メタボリックシンドロームの診断に重要な数値となります。メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の増加に、高血圧・高血糖・脂質代謝異常が加わることにより、心臓病や脳卒中になりやすい病態のことです。実際のメタボリックシンドロームの判定は、以下のような基準で行われます。
メタボリックシンドロームや予備軍と判定された方には、栄養指導、保健指導、脂質異常・高血圧・高血糖などの治療を行うことで、心疾患や脳卒中の危険性を減らすことができます。以上のように、健康診断などで腹囲を毎年測定することは、生活習慣病の予防・早期発見・早期治療を行うために重要な意味があります。
血圧・脈拍
健診や人間ドックで血圧や脈拍を計測することで、高血圧や心疾患の発見の契機になります。
高血圧とは、日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン2019によると、病院や診療所で測定した血圧で140/80mmHg以上、自宅で測定した家庭血圧では135/85mmHg以上とされています。
この程度の血圧であれば医療機関を受診されない方もおられますが、少なくともこの段階で医師や栄養士などから、食事や運動など生活習慣の是正について相談することが大切です。
視力
裸眼または眼鏡などを着用しての視力を測定します。単に近視や老眼の程度を知るのみではなく、白内障・緑内障・眼底出血などの発見のきっかけになることもあります。
聴力
オージオメーターという装置を使って、低音域と高音域の聴力を調べます。難聴は自分で気付かないこともよくあり、早期発見や治療につながります。
また、高齢者では難聴は認知症の増悪因子になることが知られており、適切な治療を行うことで認知症の進行を改善することも期待できます。
眼底検査
専用のカメラを使って目の奥の眼底を撮影します。眼底には、網膜、血管、視神経などがあり、これらの構造の異常を見つけることができます。
白内障・緑内障など目の病気のほか、高血圧・糖尿病・血管炎などによって生じる変化を見つけて、全身の病気の早期発見につながることもあります。
この検査では、瞳を開く(散瞳)薬は使わないので、検査後にまぶしくなったり、運転ができなくなったりすることもありません。
心電図
手足と胸に電極をつけて、心臓の電気的な活動を記録する検査で、検査に伴う苦痛はありません。
不整脈、狭心症、心筋梗塞、心筋の異常など、心臓に関する多くの情報を得ることができ、心臓病の診断に不可欠の検査です。
胸部X線検査
胸にX線(レントゲン)をあてて写真を撮影する検査です。心臓・血管・肺・胸の骨格・その周囲の臓器や組織などを観察でき、肺炎・肺気腫・肺や縦郭の腫瘍・心肥大・心不全・大動脈の異常などの発見のきっかけになります。
毎年、健診などで繰り返し撮影することで、以前の所見と比較することができ、より微細な異常を見つけることが可能となります。
胃部X線(胃透視、上部消化管造影)検査
バリウムを飲んで、食道・胃・十二指腸を観察する検査です。食道炎・食道癌・食道ヘルニア・胃炎・胃潰瘍・胃がん・ポリープ・十二指腸潰瘍などの診断に役立ちます。
当院では、慶應義塾大学病院放射線診断部の撮影法を行っており、非常に微細な病変も描出する最高レベルの検査を提供しています。
妊娠の可能性がある方、嚥下(飲みこみ)運動に障害がある方、体位変換が簡単にできない方は、検査を施行できないことがあります。検査後に、バリウムが順調に排泄されるように、下剤を内服していただくことがあります。
胃内視鏡(胃カメラ、上部消化管内視鏡)
口から内視鏡を飲み込んで、モニター画面で食道・胃・十二指腸を観察する検査です。病変の色調や細かい構造も観察することができ、病変の組織を採取して(生検)、顕微鏡での観察をして正確な診断(病理学的診断)を確定することができます。当院では、苦痛のない検査を行うために、細い内視鏡を鼻から挿入する経鼻内視鏡や、鎮静薬を使った内視鏡検査を、ご希望により選択していただいています。胃内視鏡には、口から内視鏡を挿入する経口内視鏡と、鼻から挿入する経鼻内視鏡があります。経鼻内視鏡は、直径5~6mmの細い内視鏡を挿入するので、喉や舌の付け根に当たりにくく、ゴクンと飲み込む時でも刺激が少ないため、嘔吐反射が起こりにくいので、楽に検査を受けることができます。また、検査に対する恐怖心が強い方、以前に検査が苦しかった方、眠っている間に検査をしてほしいと希望される方などは、鎮静薬を使ってうとうとした状態で検査を受けることができます。心拍数や血液中の酸素濃度などをモニターして、安全に検査を受けていただけるような体制で検査いたします。ただし、鎮静薬の使用した日は運転など危険を伴う作業はできません。肺気腫などの慢性閉塞性肺疾患(COPD)の方などでは、鎮静薬の使用ができない場合もあります。
腹部エコー
超音波を使って、肝臓/胆のう/膵臓/脾臓/腎臓などを観察します。各臓器内部の組成変化(脂肪肝など)、のう胞、腫瘍、結石などを見つけることができます。また、パルスドップラーという方法で、血液の流れを評価することもでき、腫瘍の中の血管なども観察することができ、良性悪性の診断に役立ちます。腹部の臓器は、胃腸の中のガスと接しているため、ガスの影響で観察が難しくなる部位があり、特に膵臓の観察は完全にできないこともしばしばあります。そのため、他の検査法で再確認することをお勧めすることがあります。
骨密度
骨密度は、骨を構成するミネラル(カルシウムやリンなど)が、どのくらいの密度で含まれているかを測定するものです。
当院では、DEXA(Dual Energy X-ray absorptiometry)法という微量の放射線を使う、精度の高い方法で測定しています。
この方法では、2種類のエネルギーをもつX線を照射して、その吸収率の違いで骨密度を測定します。
測定値は、20~44歳の健康な女性の骨密度の平均値を100%として、実際の測定値を%で表します。
70%未満は骨粗しょう症と診断されます。骨粗しょう症は女性に多い疾患で、閉経後に悪化することが良くあります。
骨粗しょう症になると、骨が弱くなり骨折しやすくなり、背骨がつぶれる椎体骨折は、必ずしも転倒したことがなくても生じることがあります。
更年期になったら、毎年骨密度を測定し、骨粗しょう症を予防または早期に治療することが、身体的活動性を保ち、健康寿命を延ばすことにつながります。
マンモグラフィー・乳腺エコー(超音波検査)
乳がん検診で施行される標準的検査はマンモグラフィーです。
乳房を2枚の板で挟み薄くのばした状態で、X線撮影する検査です。
当院では女性技師により検査を行います。
自治体での乳がん検診は40歳以上の方に、2年に1回のマンモグラフィ―を行うことが推奨されています。
しかし、マンモグラフィーは乳腺を板で挟んで検査をするため痛みがあり、X線被爆もありますので、検査を受けることを躊躇される方もあります。
そうした方には、乳腺エコーでの検査をお勧めしています。
この検査も女性技師により行いますが、あくまでマンモグラフィーとともに行うことが推奨されていますので、エコー検査の結果により、その後の検査はよく相談してご一緒に考えます。
子宮頸管細胞診
子宮頸がん検診では、産婦人科医師による診察とともに、子宮頸部から細胞を採取して検査します。
細胞診と言われる検査で、採取した細胞を顕微鏡で観察して、細胞の形態から正常~悪性までの診断を、ベセスダシステムと呼ばれる分類法で判定し、精密検査の必要性も報告します。
自治体の子宮がん検診は、20歳以上の方に2年に1度の検診を推奨しています。
PV検査
子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(Human papilloma virus、HPV)の感染によって発症します。
子宮がん検診の時に、採取した細胞診の検体を使って、このHPVウイルスの遺伝子(RNA)を調べることができます。
HPVのうちで、子宮頸がんの発症リスクが高い14種類のウイルスの遺伝子型を検出する検査です。
高リスク型のHPVウイルス遺伝子が陽性であれば、発がんのリスクが高いと判断して、検診の頻度を増やすことができます。
HPVウイルスは感染から発症までに長い年月が経過するので、HPV検査に基づいて検診を行えば、前がん状態の段階で発見することが容易になります。
経腟エコー
経腟エコーとは、婦人科検診の際に、細長い超音波機器を膣から挿入して、子宮や卵巣の詳しい観察をする検査です。
子宮頸がん以外の子宮や卵巣の腫瘍、子宮内膜の状態や血流も観察することができます。
子宮頸がん検診のオプションとして行うことができますが、性交渉未経験の方は検査できません。
頭部MRI+MRA
MRIとは、Magnetic Resonance Imagingの略称で、磁石でできたドーム状の機器の中に入り、磁石と電磁波を用いて、臓器や体の組織の状態を撮影する検査です。人体のいずれの場所でも、自由な切り口の画像を描出することができ、三次元の立体画像も作成できます。当院では慶應義塾大学予防医療センターの最新機器を共同使用して検査を行います。頭部MRIでは、脳梗塞・脳出血・脳の萎縮や腫瘍などの所見のほか、血管の走行や口径の変化などを観察するMR angiography(MRA)という検査を行うこともできます。頭痛・手足のしびれ・視力障害・物忘れなどの精密検査として検査を行います。また、全く無症状の人でも、脳動脈瘤を見つけてクモ膜下出血を予防したり、小さな脳梗塞や認知症の初期徴候を見つけたりすることができます。
頸動脈エコー
頸動脈エコーは、超音波を使って、左右の内頸動脈の壁の構造・内腔の大きさ・血流などを計測して、動脈硬化による変化を診断する検査です。頸動脈が動脈硬化により、細くなっている(狭窄)か、壁にプラークという動脈硬化による膨らみができているか、血流の障害があるか、などを観察します。内頸動脈は、脳への血流を送る血管であり、ここにできたプラークが壊れると、血栓が脳内の動脈に飛んで行き、血管に詰まって脳梗塞となります。この検査の結果のより、脳梗塞を予防するために、血栓の形成を防ぐ薬を内服したり、血管の内腔を広げる治療をしたりすることができます。
ABI/PWV
ABI(Ankle Brachial Index)とは、上腕と足首の血圧の比のことで、比較的大きな動脈が細くなっているか、その程度はどのくらいかを、推定する検査です。PWV(Pulse Wave Velocity)とは、心臓から押し出される血液の脈波の伝わる速さを測定し、血管の硬さを推定する検査です。どちらも、動脈硬化の程度を表す指標として評価されます。X線を使うこともなく、血圧・心電図の電極・心音を記録するセンサーを使うだけの簡単な検査なので、繰り返し検査をして経過を見ることもできます。
甲状腺エコー
甲状腺の内部の構造を、超音波を使って調べる検査です。甲状腺の大きさ/内部の構造/のう胞/腫瘍などを観察することができます。
赤血球数・血色素・ヘマトクリット
血液中で酸素を運搬する細胞を赤血球と呼び、赤血球中の赤い色素(血色素・ヘモグロビン)が酸素と結合し、全身の組織に酸素を運びます。血液を試験管に入れて静置した時に、下に沈む赤い部分をヘマトクリットといい、血液中で赤血球の占める割合を表します。赤血球数・血色素・ヘマトクリットが減少した状態が貧血で、それぞれの数値から、貧血の原因をある程度推定することもできます。逆にこれらの数値が上昇するときは、多血症や脱水が疑われます。
白血球数
血液中で感染防御や免疫に関与する細胞である白血球の数を測ります。白血球数の増加は細菌感染・炎症・アレルギー・血液疾患などで生じ、白血球数の減少はウイルスの感染・薬剤の副作用・血液疾患などの可能性があります。
血小板数
血小板は、出血を止めるために働く細胞で、出血や貧血の時に増加し、薬剤の副作用や肝臓病などで減少することがあります。この検査により、出血のし易さや血栓症のリスクなどを知ることができます。
AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、Aspartate aminotransferase)
肝臓・筋肉などに含まれる酵素で、この数値が上昇するときは、肝臓や筋肉の障害の可能性があります。ALTやγGTPなどとともに測定することにより、肝臓の障害の程度や原因を推定することができます。
ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ、Alanine aminotransferase)
主として肝臓の肝細胞に含まれる酵素で、この数値が上昇するときは、肝細胞が障害されていることが推測されます。ASTと同時に測定することで、障害の原因をある程度推定することができます。
γ-GTP(ガンマ-グルタミール トランスペプチダーゼ、γ-Glutamyl transpeptidase)
主として肝臓や胆管の胆管上皮細胞に含まれる酵素で、この数値が上昇するときは、主として胆管の障害があることが考えられます。アルコールが原因であるがよく知られていますが、脂肪肝や薬剤など他の原因であることもあります。
総ビリルビン
皮膚や眼の結膜が黄色くなる黄疸の原因となる物質です。血液中の総ビリルビンが上昇する原因としては、肝臓の障害のみならず、胆のう・胆管・膵臓などの病気も原因になることがあります。これらの病気では、肝臓からのビリルビンの排泄が障害され、肝細胞や肝内胆管にビリルビンがうっ滞し、血液中のビリルビンを排泄することができなくなるからです。一方、肝臓にも周辺臓器にも病気はなく、生まれつき体質的にビリルビンが軽度上昇している方もいます。こうした異常を体質性黄疸と呼び、ほとんどの場合有害なものではなく、治療の必要もありません。普段は、総ビリルビンが正常かわずかに上昇しているだけですが、感冒や炎症を起こす病気に罹患した時にさらに上昇して発見されることもよくあります。しかし、2次検診などで行われる血液検査により、比較的簡単に診断できます。
ALP(アルカリフォスファターゼ、Alkaline phosphatase)
肝臓・胆のう・胆管・骨・小腸などに分布する酵素です。肝臓・胆のう・胆管などの病気で、この数値が上昇するときは、炎症や腫瘍などにより胆管上皮細胞が壊れることで、ALPが血中に逸脱しています。また、膵臓の炎症や腫瘍によって、胆管が圧迫されて肝臓からの胆汁の排出が障害された時も、肝臓や胆管に胆汁がうっ滞するため、胆管上皮細胞が壊れて、この数値が上昇します。一方、骨疾患や、脂肪摂取後に体質的に小腸ALPが血液中で上昇することもあり、いずれの臓器が原因かを判別するためには、2次検診としてALPアイソザイムという血液検査を行うこともあります。
LDH(乳酸デヒドロゲナーゼ、Lactate dehydrogenase)
肝臓・心臓・筋肉・腎臓・赤血球など全身に広く分布する酵素で、この数値の上昇だけでは、どの臓器の障害であるかは分かりません。他の検査値との組み合わせで、総合的に判断します。ALTやγGTPと一緒に上昇すれば肝臓、AST・CPKと一緒であれば心臓や筋肉、ビリルビンと一緒であれば赤血球などと、推定することはできます。
CPK(クレアチン フォスフォキナーゼ、Creatin phosphokinase)
筋肉に含まれる酵素で、手足の筋肉である横紋筋にも、心臓・胃腸の筋肉である平滑筋にも、脳細胞にも含まれています。筋炎・心筋梗塞・腸管虚血・脳血管障害などで上昇します。どの臓器の障害が原因であるかを調べる時には、アイソザイム検査が行われますが、胸痛や心電図異常などがあって心筋梗塞が疑われる場合は、緊急的に心筋から出るCPKを直接測定することもあります。
アミラーゼ
膵臓や口の中の唾液腺に存在する酵素です。膵疾患や耳下腺炎などでこの数値が上昇します。膵疾患であれば腹痛や下痢などの症状があり、耳下腺炎ではあごの下の耳下腺が腫れて痛みや発熱も伴います。どの臓器の障害が原因であるかを調べる時には、アイソザイム検査が行われますが、膵臓由来のアミラーゼを直接測定することもできます。アミラーゼの数値は、体質的にアミラーゼが分解されにくいこともあり、病気がなくても高値のこともありますが、膵臓や唾液腺の病気の場合でも症状が全くないこともあります。特に、膵臓の病気ではがんなどの悪性腫瘍であることもありますので、健診やドックで異常を指摘された時は、一度は精密検査を受けることをお勧めします。
総コレステロール・HDLコレステロール・LDLコレステロール・Non-HDLコレステロール
健診や人間ドックの血液検査で行われるコレステロールに関する検査では、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロールなどが測定されます。LDLとはLow Density Lipoprotein、HDLはHigh Density Lipoproteinの頭文字で、その物質の重さで分類されていますが、生体内での働きとしては、LDLは動脈硬化を悪化させる悪玉コレステロール、HDLは動脈硬化を抑制する善玉コレステロールとして作用しています。血液中のコレステロールにはLDLやHDLのほかの種類もあり、総コレステロールとはそれらすべての総和です。また、HDL以外のコレステロールは動脈硬化の増悪因子となるので、健診などではHDL以外のコレステロールの合計を、nonHDLコレステロールという名称で表示されることもあります。動脈硬化が進行すると、全身の動脈が細く硬くなり、血管が詰まることにより、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な病気の原因となります。したがって、LDLコレステロールやnonHDLコレステロール値が高い時、HDLコレステロール値が低い時には、その原因を検査して、食事や運動療法など原因に応じた治療によって、数値を正常にすることが大切です。
中性脂肪
中性脂肪は血液中の脂肪の一つで、健診などでは「トリグリセリド」と表示されていることもあります。筋肉の運動などのエネルギー源となる重要な脂肪ですが、高値が続くと脂肪肝、動脈硬化、内臓脂肪などが増悪する原因になります。直前の食事の影響を大きく受け、値が変動するので、原則として空腹時(前日の21時以降は水やお茶の摂取のみ)で採血する必要があります。
クレアチニン・eGFR(推定糸球体濾過量)
クレアチンは、筋肉を動かすときに使われるエネルギーとなるクレアチニンリン酸という物質の老廃物です。従って、筋肉量の多い若い男性で高値、痩せた女性で低値となります。血中のクレアチニンは腎臓で尿中に排泄されますが、腎臓の働きが低下するとその排泄が障害され、血中のクレアチンの値が上昇します。前述のとおり、クレアチンの数値は筋肉量によって左右されますので、より正確に腎機能を表す数値としてeGFR(推定糸球体濾過量)というものがあります。血中クレアチニン値を、年齢や性別による筋肉量の推定値で補正したもので、血液中の物質を尿中に排泄する腎臓の濾過機能を表す数値として、健診や人間ドックなどの結果表などにも記載されています。真の腎機能に近いものとして参考にしてください。
尿酸
尿酸とは、食事として摂取したり、体内のエネルギー代謝で作られたりしたプリン体の老廃物です。食品の中では、うまみの成分に含まれレバー・魚介類・肉類などが代表的なものです。体内の代謝では、細胞分裂やエネルギー産生などに関連して作られ、体質的に高くなりやすい方がいます。また、腎臓の障害があると、血中から尿への尿酸の排泄が障害され、結果として血液検査の数値が上昇します。この数値が高くなると、痛風という病気の原因になります。痛風とは、血液中の尿酸が増加した結果、関節や皮下に尿酸の結晶が沈着して、炎症を起こす病気です。典型的には、足の親指の付け根が赤く腫れて強い痛みを生じます。血液検査で7.0mg/dl以上の方は、痛風発症の危険がありますので、治療が必要です。治療の基本は、食事療法やアルコールの制限などで、それだけでは不十分な場合は内服薬を服用します。
血糖・Hba1c
血糖値とは、血液中のブドウ糖濃度のことで、10時間以上絶食で測定した値を空腹時血糖とよび、約70~110mg/dlが正常とされています。血糖値を調節するホルモンをインスリンと呼び、膵臓から分泌されます。インスリンの作用不足により血糖が慢性的に上昇する状態が糖尿病です。血糖値は食事の影響で大きく変動するので、血糖値が高いだけでは糖尿病と診断することはできません。糖尿病の診断は、グリコヘモグロビン(Hba1c)という血液検査や、インスリンの分泌や作用の状態、膵臓・肝臓・副腎・腎臓などの働きを見る検査、眼底所見、末梢神経障害の有無などを検査し、総合的におこなわれます。糖尿病、高血圧、脂質異常症のうち複数に罹患している人は、内臓脂肪型肥満の人のなかでも心筋梗塞や脳卒中などの重大な病気をおこしやすいため、メタボリックシンドロームとして早期からの治療開始が必要であるとされています。血糖値が高いと2次検診を勧められた時には、たとえ糖尿病でないとしても、メタボリックシンドロームの可能性を考えて、適切な食事運動療法や薬物治療の必要性を検討してもらうことが大切です。
尿一般検査(糖/蛋白/潜血)
いわゆる検尿と言われる検査で、尿糖・尿蛋白・尿潜血などを検査して、糖尿病や腎臓~膀胱までの尿路に問題がないか調べます。尿中の蛋白とは、蛋白のなかでもアルブミンを測定していますが、通常は陰性です。健康でも、食事の内容や運動などにより、尿中にわずかな蛋白が検出されることがありますが、尿蛋白+~+++の時は、腎臓に異常がないか検査する必要があります。尿検査で尿糖陽性という場合、尿中のブドウ糖(グルコースともいう)が陽性になっているという意味で、通常糖尿病を疑います。しかし、糖尿病でなくても食後血糖値が高い時に検査すれば、尿糖がわずかに+となることはあります。また、腎性糖尿といって、体質的に尿糖が陽性となる方もいます。この場合は、腎臓の尿細管という部位で、尿からブドウ糖の再吸収がうまくできないという先天的な異常があります。血糖(血液中のブドウ糖)と尿糖を同時に検査して、血糖が正常にもかかわらず尿糖が陽性であることで、簡単に診断できます。この異常は、腎機能や全身の糖代謝には異常がないことがほとんどで、通常治療の必要もありません。尿潜血とは、尿中のヘモグロビン(血色素)のことで、これが陽性であるということは、腎臓から膀胱までのどこかで少量の出血が起こっていることを意味しています。多量の出血の時は、眼で見た尿の色が赤~暗赤色(コーラのような色)になります。また溶血といって、血管内で赤血球が壊れる病気の時にも、赤血球中のヘモグロビンが血液中に遊離し、尿中に出てくることで尿潜血が陽性になります。
便ヘモグロビン
便の一部を採取して、赤血球の血色素(ヘモグロビン)の反応を調べる検査です。便潜血検査とも呼ばれ、眼には見えない血液を検出するという意味です。ヒトのヘモグロビンに対する特異的抗体を使って、便中にヒトのヘモグロビンが含まれているかどうかを検査するので、食品に含まれる動物のヘモグロビンには反応しないので、食事の影響を受けません。また、便にヘモグロビンが検出できるのは、出血源が口から肛門までの消化管のうち、下部小腸から大腸にある場合に限られるのが通常です。胃など消化管上部からの出血では、ヘモグロビンが小腸内で消化されて、検出できなくなるからです。従って、便ヘモグロビン陽性の場合には、大腸の精密検査(大腸内視鏡検査など)を行います。小腸下部~大腸までの出血源で最も多いのは大腸癌ですので、便ヘモグロビン検査は大腸癌検診と呼ばれることもあります。痔がある方では、便に血液が付着することもしばしばあり、便ヘモグロビン検査が陽性でも、痔のせいであると思い込んでおられる方もありますが、痔のある方が大腸がんになることもあるので、大腸内視鏡検査を受けるようお勧めします。
FT3・FT4・TSH
FT3・FT4・TSH検査は、甲状腺の働きを調べる検査です。甲状腺は首の前側にある臓器で、甲状腺ホルモンを分泌します。甲状腺ホルモンには、T3とT4の2種類があり、新陳代謝を調節しています。具体的には、脈拍数、体温、自律神経などの働きを調節し、小児では成長や発達にも関わっています。T3とT4は血液中で蛋白質と結合していますが、血液検査で測定するFT3やFT4は、蛋白質と結合していない活性化されたものです。また、甲状腺ホルモンの分泌は、TSH(Thyroid stimulating hormone)という脳の下垂体から分泌されるホルモンよって調節されており、これも血液検査で測定できます。甲状腺ホルモンの産生が高まった状態が甲状腺機能亢進症で、発汗・動悸・手指の震え・体重減少などの症状がみられます。甲状腺ホルモンが低下した状態は甲状腺機能低下症で、むくみ・倦怠感・意欲低下・食欲不振などの症状がみられます。
CRP(C反応性蛋白、C-reactive proteinの略称)
血液検査の中で、白血球数・CRP・血沈は炎症反応と呼ばれ、炎症の程度を反映する検査です。全身の炎症を反映するので、歯肉炎、副鼻腔炎、扁桃炎、肺炎、虫垂炎、胆のう炎、膵炎、腎盂腎炎、蜂窩織炎など、臓器に関わりなく炎症があれば数値が上昇します。その数値は炎症の程度を反映することが多く、数値が高いほど炎症が激しいとも言えます。また、白血球数は発病した初期から上昇し、CRPは遅れて上昇してきます。一般的に、炎症反応が高い時は、炎症のある部位に痛みや腫れなどがありますが、全く症状がないのに検査値が上昇していることもあります。CRPは、症状がまだ出ない軽い炎症を反映していることもあります。症状がない時こそ、CRPが上昇している原因をしっかり検査することが必要です。
RF(リウマトイド因子、Rheumatoid Factor)
RFとは、関節リウマチの血液検査の一つで、自分の血液中の免疫グロブリンという物質に対する抗体です。陽性であれば、関節リウマチの疑いがありますが、その他の膠原病・ウイルス性肝炎・細菌性心内膜炎などでも陽性になることがあります。また、全く症状のない健常人でも陽性になることがあり、潜在的な病気ではないことを確認すれば安心できます。
HBs抗原
HBs抗原はB型肝炎ウイルスの検査で、この検査が陽性であれば、B型肝炎ウイルスに感染していることを意味しています。しかし、症状もなく肝機能検査も正常で、日常生活には全く差し支えない方もいて、B型肝炎ウイルスキャリアーと呼ばれています。このような方は、治療の必要はありませんが、他の方にウイルスを感染させる可能性があります。食事や入浴などの日常生活で感染する可能性はありませんが、粘膜や血液からは感染することがあり、性交渉・歯ブラシ・針やかみそりで皮膚を傷つけた場合などは感染リスクがあると言えます。したがって、キャリアーの配偶者や性的パートナーには、B型肝炎ワクチンを接種して、感染を予防することが必要です。また、同じ理由で、献血や臓器移植の提供者になれませんし、医療機関で検査を受けるときにも、自分がキャリアーであることを申告する必要があります。こうした感染リスクを回避するためには、精密検査を受けたうえで、生活上の注意点を知ることが大切です。前述のとおり、注意点を知っていれば、感染のリスクは完全に回避することができますので、日常生活や仕事において制限を受けることは全くありません。
血液型
血液型とは、一般には血球表面の糖鎖やタンパク質を、その構造の違いにより分類した名称です。ABO血液型やRh血液型が代表的なもので、輸血の際にはこれらが一致した血液が必要であり、献血の際にも確認をします。
HA抗体
HA抗体とは、A型肝炎ウイルスに対する抗体を調べる検査です。以前にA型肝炎ウイルスに感染したか、ワクチンを受けた人では陽性となり、A型肝炎に対する免疫(抵抗力)があることが分かります。
HBs抗体
HBs抗体とは、B型肝炎ウイルスに対する抗体で、以前にB型肝炎ウイルスに感染したか、ワクチンを受けて抗体ができた人では陽性となり、B型肝炎に対する免疫(抵抗力)があることが分かります。しかし、B型肝炎ウイルスに以前に感染した人では、HBs抗体が陽性になっていても、ウイルスは完全には排除されず、肝臓などの細胞の核内遺伝子に組み込まれていることが知られています。その後、免疫抑制剤や抗がん剤などの投与により、免疫能が低下した時に、肝炎ウイルスが再度活性化されて、重症の肝炎を発症することがあります。したがって、ワクチンの投与によってHBs抗体が陽性になった方以外は、体の中にB型肝炎ウイルスが残っている可能性を認識しておくことが必要です。
HCV抗体
HCV抗体はC型肝炎ウイルスに対する抗体で、陽性の場合は、現在C型肝炎ウイルスに感染している場合と、すでに治癒してウイルスは体内から消えている場合とがあります。この判別を行うためには、HCVRNA検査という血液検査が必要になります。C型肝炎ウイルスはたとえ感染していても、B型に比べて他人への感染のリスクは小さく、日常生活での制限もほとんどありません。しかし、配偶者や性的パートナーへの感染は起こり得ることが分かっており、それを防ぐワクチンが未だに開発されていないので、感染防止策を考える必要があります。最も確実な感染防止策は、C型肝炎ウイルスの治療をして、ウイルスを排除することです。C型肝炎ウイルスの治療は、2~3か月間内服薬を飲むだけであり、ほとんどの方でウイルスが消えて治癒します。
便虫卵検査
便の一部を採取して、腸管寄生虫の虫卵を検査します。回虫や鞭虫などの検査を行いますが、国内での腸管寄生虫症の発生は減少しており、感染リスクの高い国からの帰国者の検診として行います。
ナトリウム・カリウム・クロール
血液中の塩分(電解質)のうち、ナトリウムとクロールは食塩の成分で、カリウムは果物や野菜に多く含まれる塩分です。
ナトリウムとカリウムは相互に作用しながら、細胞内外の水や電解質の平行状態を維持し、心臓や筋肉細胞の運動、神経細胞の刺激伝達などの働きに関与しています。
ナトリウム・カリウム・クロールは腎臓から尿中に排泄され、血中濃度が一定となるように調節されています。腎機能の障害・脱水状態・ホルモン異常などで、これらの電解質のバランスが崩れることがあり、著しい場合には筋力低下・意識障害・不整脈などの原因となることもあります。
LOX index
LOX indexは、脳梗塞や心筋梗塞を発症する危険性を調べる血液検査です。超悪玉コレステロールである酸化変性LDLと、それを血管壁に取り込み動脈硬化を悪化させる蛋白質である可溶性LOX-1とを測定して、その値により脳梗塞や心筋梗塞を発症する危険性を4段階に分類します。
この分類に基づいて、さらに詳しい検査や発症予防の対策を、適切に組み立てることができます。
NT-proBNP
NT-proBNPとは、ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(N-terminal pro-brain natriuretic peptide)と呼ばれる物質を血液検査で測定します。
心臓の壁の筋肉(心筋)にかかる圧力を反映して生成される物質で、心不全の指標として測定されます。しかし、年齢・腎機能・炎症・肥満などによっても、数値が変動するため、この数値が高いだけで心不全と診断できるものではありません。
この数値が高いという指摘をされた時は、内科や循環器内科などで精密検査を受けていただくことで、心不全の早期発見につながります。
膵アミラーゼ
アミラーゼとは、膵臓や口の中の唾液腺に存在するでんぷんを消化する酵素です。
膵アミラーゼは、このうち膵臓由来アミラーゼを、直接測定する血液検査です。アミラーゼの数値は、体質的にアミラーゼが分解されにくい方もあり、病気がなくても高値のこともありますが、膵アミラーゼが高値の場合は、膵臓の病気の可能性があります。
症状がなくても精密検査を受けるようお勧めします。
低カルボキシル化オステオカルシン/TRACP-5b/副甲状腺ホルモンintact/total P1NP/25-OHビタミンD
骨の硬さである骨密度は、新しい骨が骨芽細胞により作られる「骨形成」と、古くなった骨を破骨細胞により破壊する「骨吸収」とのバランスによって、維持されています。
オステオカルシンは、骨芽細胞が作る骨のたんぱく質の一種で、骨形成がうまくいかないときには、低カルボキシル化オステオカルシンという状態となって血中で増加します。
P1NPは、1型プロコラーゲン-N-プロペプチド(type 1 amino-terminal propeptide)の略称で、骨芽細胞で産生されるため骨形成の指標となる血液検査です。
ビタミンDは、カルシウムやリンなど骨形成に必要なミネラルを吸収するのに必要なビタミンです。
25-OHビタミンDは活性型のビタミンDが代謝されたもので、血液中の測定によりビタミンDの充足状態を推定することができます。
副甲状腺ホルモンは、頸の前側にある副甲状腺という組織から分泌されるホルモンです。血液中の副甲状腺ホルモンのうちで、前述の作用を発揮している形のものを測定する検査が、副甲状腺ホルモンintactです。
TRACP-5bは、骨型酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ(Tartrate-resistant acid phosphatase-5b)の略称で、破骨細胞に存在する物質です。骨吸収によって血液中に放出されるので、骨吸収の状態を反映します。
以上の、5つの検査を組み合わせて、骨生成と骨吸収のバランスを評価して、骨粗しょう症のリスクを判断します。
また、効果的な対策の策定にも有用な情報を得ることができます。
血沈
血沈は炎症反応と呼ばれ検査の一つで、炎症の程度を反映する検査です。全身の炎症を反映するので、臓器に関わりなく炎症があれば数値が上昇します。
炎症反応が高い時は、炎症のある部位に痛みや腫れなどがありますが、全く症状がないのに検査値が上昇していることもあります。
血沈は、症状がまだ出ない軽い炎症を反映していることもあります。また、貧血や異常な蛋白質が血液中に増加しているために血沈が高値となることもあります。
症状がない時こそ、炎症反応が上昇している原因をしっかり検査することが必要です。
抗核抗体
抗核抗体検査とは、自分の細胞核に対する抗体が、血液中に存在することを調べる検査です。
関節リウマチをはじめとする膠原病や感染症など多くの疾患で、陽性になることがあり、広く病気の可能性を調べるには便利な検査ですが、この検査だけで膠原病などの診断はできません。
健康な人でも陽性になることもあり、関節痛などの症状がない場合は、心配する必要はないことも多いので、膠原病リウマチ内科医師に相談ください。
抗CCP抗体
CCPとは、環状シトルリン化ペプチド(cyclic citrullinated peptide)の略称で、正常の状態では体内には存在しないものです。
抗CCP抗体は、血中のCCPに対する抗体を測定する検査で、関節リウマチの患者さんでは高率(70~85%)に陽性となり、関節リウマチでない人で陽性になることは少ない(5%以下)ことが特徴です。
関節リウマチの患者さんでも陰性のこともあり、陽性でも関節リウマチにはならない人もいますので、膠原病リウマチ内科では他の検査も組わせて診断を確実なものにして行きます。
抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体・抗サイログロブリン抗体
抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体は甲状腺の細胞内のペルオキシダーゼという蛋白質に対する抗体で、抗サイログロブリン抗体は甲状腺の濾胞細胞内のサイログロブリンという糖蛋白質に対する抗体です。血液検査での測定値は、いずれも橋本病やバセドウ病といった免疫異常により起こる甲状腺の病気の時に上昇します。特に橋本病では、これらの検査が診断には必須のもので、健診や人間ドックでもよく測定されます。甲状腺は首の前側にある臓器で、甲状腺ホルモンを分泌します。甲状腺ホルモンの産生が高まった状態が甲状腺機能亢進症で、発汗・動悸・手指の震え・体重減少などの症状がみられます。甲状腺ホルモンが低下した状態は甲状腺機能低下症で、むくみ・倦怠感・意欲低下・食欲不振などの症状がみられます。また、甲状腺の病気では甲状腺が大きくなり、首の前が腫れていることに、自分でも気が付くことがあります。橋本病は、症状もなく、甲状腺機能検査でも異常がない場合もありますので、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体や抗サイログロブリン抗体が陽性になった場合は、内科で精密検査を受けてください。
梅毒検査(RPR・TP抗体)
RPR(rapid plasma reagin)は、カルジオリピンという脂質成分に対する抗体を検査し、TP抗体は梅毒の原因菌であるトレポネーマ・パリダムに特異的な抗原を認識する抗体を調べる血液検査です。RPRは、梅毒感染後2~5週間で陽性となり、TP抗体はそれより遅れて陽性になります。RPRは梅毒以外の疾患でも陽性になることがありますが、TP抗体は梅毒を正確に診断する検査です。ただし、RPRは治療などにより梅毒が軽快した後は陰性になりますが、TP抗体は長く陽性が続きますので、現在梅毒に感染していると断定することはできません。いづれにしても、梅毒は症状のない時期を経て、全身に広がる病気ですので、これらの検査が陽性の場合は皮膚科での精密検査をお勧めします。
TUMOR MARKER TEST
腫瘍マーカー検査
PSA(Prostate specific antigen)
PSAは、前立腺の組織に含まれる蛋白質で、前立腺癌の発見に非常に有用な方法です。
PSAは、前立腺癌がなくても、前立腺肥大や前立腺炎などで上昇します。
しかし、精密検査でも発見できないような微細な前立腺癌でも高値になることがあるので、この検査で2次検診が必要と言われた時は、泌尿器科を受診してください。
CA125
CA125は卵巣癌や卵管癌の腫瘍マーカーで、血液検査により測定します。
卵巣癌の患者では70~80%で上昇していると報告されています。
しかし、早期の卵巣癌では陰性となることもあり、逆に卵巣の良性腫瘍・子宮内膜症・子宮筋腫・消化器疾患でも陽性になることがあります。
さらに、エストロゲンの作用により産生が増えるため、正常の人でも性周期によって値に変動があります。
したがって、CA125は超音波検査などの画像診断とともに行うことが推奨されています。
CEA(癌胎児性抗原、Carcinoembryonic antigen):
CEAは、胎児の腸管に含まれる蛋白質で、腺癌という種類の癌で血液検査の数値が上昇することがあります。
腫瘍マーカーの代表となっていますが、どの臓器の癌であるかはわからないので、2次検診では広く全身の検査を行うことになります。
また、癌がなくても、長期の喫煙・妊娠・炎症などでもCEAが上昇することがあり、CEAが高いだけで過剰に心配する必要はなく、全身の検査をして癌がなければ、禁煙して経過を見るということもよくあります。
SCC抗原(扁平上皮癌関連抗原、Squamous cell carcinoma associated antigen)
扁平上皮癌に含まれる蛋白質の反応を、血液で調べる検査です。
扁平上皮癌の発生が多いのは、食道癌・咽頭癌・子宮頸癌・肺癌などですが、早期癌では陰性であることも多く、逆に癌がなくても検査が陽性になることもあり、内視鏡・CT検査・細胞診などの検査を組み合わせて診断を行います。
NSE、ProGRP、CYFRA
NSE(神経特異エノラーゼ、Neuron specific enolase)は、神経細胞や神経内分泌細胞に存在する蛋白質を、血液検査で測定するもので、肺小細胞癌・神経内分泌腫瘍・神経芽細胞腫・乳癌などで上昇することが知られています。
ProGRPは、ガストリン放出ペプチド(GRP、gastrin releasing peptide)の産生に伴って血液中に遊離されるペプチドの一部です。
CYFRAとは、扁平上皮癌に含まれるサイトケラチン19フラグメント(Cytokeratin 19 fragment)という物質を血液で測定するもので、肺の非小細胞癌で上昇することが知られています。
以上の検査も、他の腫瘍マーカーと同じように、早期癌では陰性であることも多く、逆に癌がなくても検査が陽性になることもあり、CT検査・MRI検査・内視鏡検査・細胞診・組織生検などを組み合わせて診断を行います。
CA19-9、Span-1
CA19-9とSpan-1は膵がんの腫瘍マーカーとして知られています。
CA19-9は、胆のう癌・胆管癌・大腸癌・卵巣癌などにも分布しており、癌の臓器や存在を示すものではありません。
Span-1は膵臓・胆管・肝臓癌などに限られた腫瘍マーカーですが、肝障害や膵炎などでも陽性となることがあります。
これらの検査も早期癌では陰性であることも多く、逆に癌がなくても検査が陽性になることもあり、CT検査・MRI検査・内視鏡検査・細胞診・組織生検などを組み合わせて診断を行います。
AFP(αfetoprotein)
AFPは、胎児の肝臓に含まれる蛋白質で、肝細胞癌によっても産生されるため、腫瘍マーカーとして検査されます。
B型肝炎・C型肝炎・肝硬変などでは、肝細胞癌が発見される前や早期でも、数値が上昇してくることがあり、
超音波検査やCT・MRI検査などの診断を補う役割を果たすこともあります。
しかし、肝炎や胃癌など、他の疾患でも高値となることもあり、AFP高値イコール肝臓癌とは言えず、超音波検査・CT・MRI検査などで正確な診断を確認する必要があります。